解雇と退職の違い

解雇とは、使用者(会社)の一方的な意思表示による労働契約の解約のことをいいます。

退職とは、使用者の一方的な意思表示によらない労働契約の解約のことをいいます。

このように、解雇と退職は、労働契約の解約という点は同じであるものの、それが「使用者の一方的な意思表示によるか否か」という点に違いがあります。

解雇の種類

解雇には、「普通解雇」、「整理解雇」、「懲戒解雇」といった種類があります。

「普通解雇」とは、懲戒解雇以外の解雇をいいます。

「整理解雇」とは、普通解雇のうち、会社の経済的な理由に基づく人員整理のために行う解雇をいいます。

「懲戒解雇」とは、就業規則等に懲戒事由及びその手続の規定がある場合に、それに基づいて使用者が労働者に対する懲戒処分として行う解雇をいいます。

退職の種類

退職には、「辞職」や「合意解約」、定年退職、休職期間満了による退職といった種類があります。

「辞職」とは、労働者の一方的な意思表示による労働契約の解約をいいます。
期間の定めがない労働契約の辞職の場合、労働者は「いつでも」解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって労働契約は終了します。
他方、期間の定めのある労働契約の辞職の場合、労働者は「やむを得ない事由」があるときに、直ちに労働契約を解約することができます。

「合意解約」とは、労働者と使用者との合意で労働契約を解約することをいいます。

解雇の進め方

まず、雇用契約、就業規則の内容を確認し、本件は解雇事由に当たるのか確認します。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないのに解雇をした場合、解雇権の濫用として無効になってしまいます。

次に、解雇を事前に予告して行う場合、「解雇の予告通知」を行います。
紛争を予防するために書面で作成し、会社名や日付、解雇予定日や解雇理由等を記載します。

仮に、解雇を事前に予告せずに行う場合、「解雇の通知」を行いますが、使用者は、労働者に対し、離職日の少なくとも30日以上前に解雇を予告する義務があります。
その予告がなかった場合、30日分以上の当該労働者の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。

さらに、「懲戒解雇」を行う場合には、就業規則等に記載した懲戒手続を経る必要があります。
就業規則や労働協約に手続が規定されているのに、これを経ずに懲戒処分を行った場合には、懲戒権の濫用として無効となることがあります。

退職勧奨の進め方

「退職勧奨」とは、使用者が、労働者に任意に退職をするように説得することをいいます。

まず、「退職勧奨の話し合い」の準備をします。
退職金上乗せ等の退職条件の検討や、問題のある社員であれば証拠を収集して解雇の準備も行うこと等が考えられます。

次に、退職届の提出か、退職合意書への署名捺印をして貰えるように話し合いを行います。
話し合いの場所、人数、言葉選び等に注意して、円満に退職してもらうことを目指します。

そして、退職に合意して貰えた場合には合意書への署名捺印をしてもらうこと、退職を明確に拒否され、合意して貰えない場合には、退職勧奨はあくまで任意であることから引き下がることが紛争を防ぐためには大切です。

解雇と退職の注意点

信条や妊娠等、一定の理由による解雇は、法律上禁止されているので、確認が必要です。

また、解雇等の結果、会社都合で退職すると、労働者は、自己都合退職の場合よりも早く雇用保険の失業給付を受領できます。
他方、使用者は、助成金に解雇(退職勧奨を含む。)を不支給要件とするものもあるので、助成金受給に支障を受ける可能性があります。
そのため、現在又は将来の受給に影響がないか確認する必要があります。

さらに、解雇の場合、不当解雇として争われる可能性がありますが、退職勧奨によって退職を合意して貰った場合でも、長時間・複数回の説得で退職を強要したり、解雇事由がないのにあると誤信させて交渉したりする等の事情があれば、強迫や錯誤、詐欺等により退職合意を取り消すと主張される可能性がありますので、慎重な対応が必要です。
加えて、社会的相当性を逸脱すれば不法行為となり、損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。

その他、解雇や退職をする労働者に対する未払賃金がないか確認したり、退職金規定のある会社であれば、不払となる事由や減額規定を確認した上で、支払額や支払日を確認したりする必要があります。

弁護士に依頼するメリット

弁護士にご依頼いただければ、労働者から退職届を出された場合の対応や、解雇や退職勧奨の紛争化を予防する準備、紛争となった後にどのような対処ができるか等をアドバイスすることができます。
いずれも出来るだけ早く相談していただくことが重要ですので、お気軽にご相談ください。

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