従業員の不祥事と刑事事件

はじめに

従業員が犯罪を犯し刑事事件となった場合、会社の立場は3通り考えられます。

  1. 単に犯人の勤務先であるだけの場合
  2. 会社が被害者である場合
  3. 会社が実質的な加害者として扱われ、直接行為者と共に刑事責任を負う場合

それぞれで、対応の方向性が異なってきます。

1.単に犯人の勤務先であるだけの場合

雇用主として、従業員にどのような措置をとるかを検討する必要が出てきます。

会社の信用を毀損したとして、懲戒処分、特に懲戒解雇や諭旨解雇を図ることが多いかと思われます。

しかし、懲戒処分をするにあたっては、労働契約法15条の定める懲戒権乱用法理の適用を回避することが必要になります。
さらに、解雇までするのであれば、法令上の解雇規制に該当しないことも必要になります。

具体的には、①就業規則などで懲戒事由及び懲戒の種類が明確に決められていて、その就業規則などが従業員に周知されていること、②その就業規則などが定める内容が合理的であること③規定の事由に該当すること④手続・内容等の適正性(平等な取り扱いであること、弁明の機会を経ていること、処分の必要性がある期間内に下されたこと、重すぎない相当な内容の処分であることなど)です。

懲戒処分の有効性でのちにトラブルとなることを防ぐために、事前に弁護士に相談されるとよいでしょう。

2.会社が被害者である場合

犯人の勤務先として上述のような対応をとるほか、被害者としての対応が必要になります。

具体的には、被害届の提出や捜査への協力といった刑事関連の対応のほか、被害の賠償を求める民事上の対応をとることが考えられます。

また、従業員による犯罪被害の問題を発生・再発させないための事前対策・再発防止策を講じていかなければなりません。

とるべき対応や対策案については、刑事関連法規やコンプライアンス問題など考慮すべき事項が多岐にわたるため、弁護士にご相談されることをお勧めします。

3.会社が実質的な加害者として扱われ、直接行為者と共に刑事責任を負う場合

処罰規定の中には、従業員が違反行為をした場合に同時に業務主をも処罰する内容の「両罰規定」という形式をとるものがあります。

両罰規定の適用に際しては、基本的に事業主の過失が推定されてしまいます。
ただ、行為者の選任・監督そのほか違反行為を防止するために必要な注意を尽したことを立証すれば、刑事責任を免れることになります。

この立証に際しては、処罰の根拠とする法令の解釈や事実関係の有無・評価について調査・検討して行くことが求められます。
そのため、法律の専門家である弁護士への相談をお勧めします。

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